




「音から作る演劇」と謳うヌトミックの公演。
ここでいう音とは、戯曲中の言葉が声帯を通して空気の振動に変換されることと、それを整えて構成する行為を指す。
本作は額田が普段スタジオとしても使用しているリトミック音楽教室で上演された。
リトミックとは、ダルクローズが提唱した音楽教育法。ヌトミックの由来である。
演奏の上達を目的とせず、演劇や舞踏のトレーニングにも導入される領域横断的なリトミックの考え方は、ヌトミックの試みに通じるところがある。
舞台美術には黒い長方形を使用した。長方形ないし棒は、「ま」や「ないこと」を表す記号である。
これが文章中にあるとき、時間の経過や、音節を一間隔伸ばすという意味になり
表や数値の空欄にあるときは、そこがないことで埋められた空欄であることを表している。
この長方形は、音楽の世界でもかならずと言っていいほど登場する。
楽譜のなかで音を「出さない間」を表す休止符の形だ。
私はこの記号をみていると、シーン…としかいえない気分になってくる。
感覚が記号によって形成されていると感じうる決定的瞬間である。
全休符。シーン…
そしてこの「ま」を立体にしたもの。
この物体は軽量かつ丈夫で、移動させたり上に乗ったりすることができ、無視することもできる。
直方体の「ま」
舞台設計図
ヌトミック『シュガドノッカペラテ』
2016年11月20日(日)〜28日(月)
潤色・演出:額田大志
作:河野当当
出演:宇都有里紗、藤井祐希、藤倉めぐみ
美術:タカラマハヤ
宣伝美術:三ッ間菖子
記録:徳永綸
運営:杉浦一基