青は藍より出でて藍より青しという言葉があるが
のぞき込んだ藍甕の中は確かに青くはなく、黒くもなく
この工房のぼわっと湿ったぬるい空気と匂いを溜めたらこんな色になるのだろうか、
なんとも言えない色をしている。

秀夫さんは布のハギレを取り出して、よく見てなと言いながら染めの工程を見せてくれた。
甕から取り出した瞬間、褐色だったハギレはほんの3~5秒くらいで緑、青と変わっていく。
藍を建てるとは、灰汁でスクモ(なんなのか説明できない)を発酵させることで、これが空気中で酸化すると青色になる。
愉快な化学現象に見惚れているうちに、八巻さんはこの工程をささっと繰り返して小さなハギレに鮮やかなグラデーションをつけていた。

宮城県伊具郡丸森町にある藍染工房。
繭さんは、父・秀夫さんの工房の手伝いをしながら「伽藍」をはじめた。
丸森は山に囲まれている。四方山(よもやま)話という言葉があるが、四方山(しほうさん)という山があるのもこの近くらしい。
駅まで迎えにきてくれた繭さんの車に乗って、山の道をぐんぐん進む。

藍のこと、この町や友達のこと、隣町のこと。
ハンドルを握りながらころころと彼女がしてくれる話を聞いていると
ここが初めて来た場所ではなくて、それも前からずっと知ってたかのように落ち着いた気分になっていた。

 

ウェブサイト制作は鈴木健太。
鈴木に同行して2016年秋に丸森で撮影した写真たちを使用して頂いた。

伽藍 garan  |  web site