16年2月『それからの街』再演のポスター

 
 

2016年2月、額田大志の卒業制作として行われた演劇公演のための宣伝美術と舞台美術。
この公演は2015年11月に行われた同作の再演となる。
4人の役者の会話が、反復やズレなどの音楽的技法で展開される。

繰り返されるなんの変哲もない団地の日常とその消失。
豊かさは満たしていくことのようで、実はそれを反芻する「空白」の中に存在するのかもしれない。
このポスターでは「反復」や「発話」そして「空白」といった概念のビジュアル化を試みた。

 

 

15年11月『それからの街』初演のフライヤー

 

舞台美術は大中小の三つの四角いフレームからなる。
フラットな舞台上に置かれたフレームは、役者たちの動きの磁場となり、ちょうど団地にあるちょっとした公園の遊具かベンチのように腰掛けたり、井戸端会議の舞台になる。上に乗って移動したり、回転したり。ブランコや砂場、ちゃぶ台、ドア、飛行機まで…様々な用途に見立てられ、情報量の少ない舞台上で機能的に振る舞う。

初演では、舞台美術の構造をそのまま宣伝ビジュアルに使用している。抽象に見えて極めて具体。
長方形とフキダシの構造は再演時のビジュアルにも流用した。
「再演は初演と同じようで全く別物にしたい」という額田の発言からこのような形になった。
同じことを繰り返しているようで少し変化させて全くの別物にしてしまう方法は、額田の演出七つ道具のひとつだ。

 

再演の様子

 

舞台照明では投光器に色フィルター(ゼラ)をつけることでドラマティックな表現ができるが、
役者の発話に演出効果を集中させるため、今回はフィルターを使わなかった。
かわりに、2色に塗り分けられた舞台美術が間接照明の役割を持っていた。
内側に塗られた蛍光色がライトを当てる微妙な角度によって赤い光を反射する。

同じ光を舞台上でミックスすることで状況を作り出していった。

 

 

初演の際は、三角形のシェードがついた3つの照明装置を吊るした。
平面的な印象のホワイトキューブの中で、シェードの影が空間を切り取る。
3つの微妙な明るさの組み合わせでシステマチックに場面を設定できる機構である。

 

 

『それからの街』"From the City"

2016年2月6日(土)~7日(日)

作・演出:額田大志

出演:宇都有里紗、相澤友希、山﨑葵、菊地敦子

総合美術:タカラマハヤ
照明:松島州伸
音響:染野拓、徳丸ゆいの
舞台監督:福嶋芙美 
制作:杉浦一基、森本菜穂
製作協力:薬袋桃子、鈴木啓佑、佐藤 栞

 

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